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手先は器用でも生き方は不器用

手先は結構器用だけれど 生き方は意外と不器用。 歯科技工学科の専門学校に通う若色唯咲、20歳の日記。

§ 偽りの日々 闖入者

 
ロータリーで見かけた黒バイクは―――
窓をすり抜けてバスの中に転がり込んだ。

驚いて声も出せないままでいると、黒バイクのライダーは個性的なフォルムを描いたヘルメットに両手をかけた。
小気味よくヘルメットを脱ぐと、明るい金髪が。
どこかで見たような。

先ほど電車中でヘッドバットを喰らわせた若者その人であった。
「や、いらっしゃい」
運転手は特に驚くことも無く闖入者を迎え入れた。
「このバスは途中乗車可能なんですか?」
「バスの気分次第で乗せたり、乗せなかったりさ」
「は、はぁ」
運転手のズレた答えに曖昧な相槌を打つ。
バスの気分次第で急に途中下車させられたらどうしようか。
 
「いやぁ、今日は乗れたかぁ、よかったよかった」
どっこらしょ、とバイクの男は赤い優先シートにどっかりと腰掛ける。
そういえば、他の乗客は?
いつの間にか姿が見えなくなってそれっきりだ。
「あの、運転手さん。他の人はどこ行ったんでしょうか?」
「うーん、大体の人は他のバスにこっそり移されたんだと思いますよ?……多分」
最後の多分が気になるが、この際無視することにする。

窓から下を見る。
いつもよりパトカーが多いくらいで、特に変わったことは無い。
下からはこのバスは見えないのかもしれない。
毎朝通る道の真上を空飛ぶバスはプカプカと泳ぐ。
他のバスが道路を走るのも見えた。これは飛んでいないバス。乗客がこっそり移されたかもしれない、バス。
「どうして自分は他のバスに移されなかったんだろう……」

バイクの男がケラケラと笑う。今の呟きが聞こえたらしい。
「お前がイレギュラーだからだろうよ?」
「イレギュラー?」
そ、と得意げに鼻を鳴らす。
「幽霊とか、未来人とか。そういう『普通じゃないヤツ』は他のバスに移せないんだろ」
途中乗車と運転手は別口なのだそうだが。
妹と今朝、頭をぶつけて入れ替わったから、それかな?
考えようによってはラッキーだ。
妹と入れ替わる確率なんて雷に打たれるより低いだろうし、それに加えて空飛ぶバスとは。ね。


【続く?】



忘れた頃に再始動嘘日記【虚言日記】



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2007/06/04/Mon 22:46:11  【虚言】九割九分九厘捏造記事【日記】/CM:0/TB:0/

§ 偽りの日々 空飛ぶバス

 
『離 陸 い た し ま す 、 ご 注 意 下 さ い 。』


運転手がアクセルを強く踏み込むとバスは恐ろしげな声で咆え、その巨体をゆっくりと、ゆっくりと宙に浮かせ始めた。
周りの景色が低くなっていく。右隣を走っていた乗用車のミラーをかすめ、前を走っていた軽トラを前輪で踏みつけ、飛び上がる。

ジェット機のように重力を振り切るのではなく、風船のように重力から解放されているような飛び方だった。

車体が完全に浮くと今まで走っていた道路が真上から望めた。
振り返るといつの間にか自分以外の乗客が煙のように消えてしまっていた。あんなに沢山乗っていたのに。
恐怖はなかったが、狐につままれた―――という言葉はこういうときのために有るのだろうか。

窓にもたれて道路を眺めていると
「そんなに空飛ぶバスが珍しいんですか?」
運転手が静かな声で訊ねてきた。
珍しいも何も、車は走るもので飛ぶものではないだろう?
「バスもね、飛べるんですよ。あんまり重いから、毎日飛ぶもんじゃないんですけどね」
「……どういうことですか?」思わず言葉が出た。妹の声で。

フロントガラスに映りこむ運転手の口元が笑ったようだ。
「どんな乗り物もね、基本的には飛べるように作られているんですよ。ただ、簡単に離陸できるつくりのものと、そうじゃないものとがありましてね。バスは重い上に翼が小さいでしょう?だから飛ぶのは得意じゃない。ある程度の加速も要るし、踏み台が無くちゃいけません」
今日はツイてる、と運転手は笑う。いつの間にか運転手はしっかりとこちらを向いて話していた。

ハンドルは?

覗き込むと独りでに舵を取っている。
「飛んでいる間は交通事故を気にしなくていいから楽ですよ。同じ時刻に二台以上空飛ぶ車は存在できないって決まりが有りますからね」
「決まり?」
「えぇ。だって一度に全部の車が飛び立ったら、大変なことになるでしょう?世の中ってのはうまく出来てるんですよ。ハンドルが勝手に動くのも、決まりです。飛んでいるバスを操作できるのはバス自身以外にありません。いつ飛ぶのかもバスの気分と決まりごと次第なんです」
バスの気分か。
なんだかよく解らなくなってきた。

もう一度車窓から外を見るとやはり他の車ははるか下に。
ロータリーで見かけた黒バイクがパトカーと追いかけっこをしていた。
バイクは物理的な法則を無視しつくして車の間を縫っているかと思えば建物の壁を垂直に駆け、空中へと飛び出した。



この空飛ぶバスに向かって。




【続く?】




99.9%濃縮還元虚構空想【虚言日記】





2006/09/10/Sun 11:14:40  【虚言】九割九分九厘捏造記事【日記】/CM:0/TB:0/

§ 偽りの日々 バスから見た風景

 
男からの動きが無いまま電車は終点に着いた。
冷汗かいて損したなどと思う間もなく、
電車を降りる人の波、波、波。


ホームの階段を上りきると更に人、人、人。


改札に定期券を突っ込むと(そう、自分はsuicaユーザーではない)
何故か引っかかる。

それもそのはず、定期券と間違って献血手帳を突っ込んでいた。
全てが面倒になったので改札を飛び越えついで、そのまま駅の西口をでる。

西口前は市バスとタクシーのロータリー。
グルグルと目が回るように入れ替わり立ち代りする車両を眺めるのが好きだった。

フロントガラス以外の窓に黒いカーテンがかかった車が路地から出てくる。
乗っているのは若い男性(ビジュアル系崩れ)。
ホストか。駅の周りにはそういう店が多いしな。
タクシーとニアミスを繰り返しながら別な路地へ吸い込まれていった。




目の前のバス停に止まったバスから人が数人吐き出され、
それと入れ違いにバス停に並んでいる人たちが飲み込まれていく。

この人数だと座れそうに無いな。
次のバスでも学校にはギリギリで間に合うから、次でいいか。

バスは重く唸ってバス停を離れた。

すると直ぐに別のバスがロータリーに入ってきた。
行き先の表示を見る。

間違いない、学校前のバス停経由のバス。

今度は整理券をとって乗り込んだ。
窓側の席に座って車外を眺めると、不思議なバイクがバスの合間を縫っていくのが見えた。



黒いバイクだが、車体自体はさして珍しくない。

そのバイクのライダー胴体の上にはまるで

某電撃文庫のデュラハン(首なしライダー)のものを模したかのようなヘルメットが(具体的に言うなれば、ネコの耳のような突起のついた黄色のフルフェイスヘルメット)乗っていたのだ。

一瞬、フルフェイスの向こう側の人物と目が合った様な感覚に陥ったが、
すぐに黒バイクはパトカーとバスとタクシーの合間を縫って路地へ消えた。

コシュタバワー(首なし馬=黒バイク本体)の嘶きを聞くことは出来なかったが、
アレはきっと伝説の首なしライダーだったのだろうと

個人的な趣味から勝手に結論付けた。


先ほどの黒バイクがビルの壁を垂直に登る場面を想像していると、そのうちにバスも身震いをし、他のバスとバスの間に身体をねじ込んでロータリーを抜けた。





運転席の真後ろに座ると、運転手の動きがよく解る。
アクセルやクラッチを踏む動きも、運転手の目線も。
此のバスは常に二速発進。一速のギアは余り使わないらしい。



運転手がアクセルを踏み込むと同時に小声で車内アナウンスを流したのを、自分は聞き逃さなかった。












『離 陸 い た し ま す 、 ご 注 意 下 さ い 。』





【続く?】




99.9%捏造のクォリティー【虚言日記】



 
 

2006/09/05/Tue 23:33:03  【虚言】九割九分九厘捏造記事【日記】/CM:0/TB:0/
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