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手先は器用でも生き方は不器用

手先は結構器用だけれど 生き方は意外と不器用。 歯科技工学科の専門学校に通う若色唯咲、20歳の日記。

§ 偽りの日々 空飛ぶバス

 
『離 陸 い た し ま す 、 ご 注 意 下 さ い 。』


運転手がアクセルを強く踏み込むとバスは恐ろしげな声で咆え、その巨体をゆっくりと、ゆっくりと宙に浮かせ始めた。
周りの景色が低くなっていく。右隣を走っていた乗用車のミラーをかすめ、前を走っていた軽トラを前輪で踏みつけ、飛び上がる。

ジェット機のように重力を振り切るのではなく、風船のように重力から解放されているような飛び方だった。

車体が完全に浮くと今まで走っていた道路が真上から望めた。
振り返るといつの間にか自分以外の乗客が煙のように消えてしまっていた。あんなに沢山乗っていたのに。
恐怖はなかったが、狐につままれた―――という言葉はこういうときのために有るのだろうか。

窓にもたれて道路を眺めていると
「そんなに空飛ぶバスが珍しいんですか?」
運転手が静かな声で訊ねてきた。
珍しいも何も、車は走るもので飛ぶものではないだろう?
「バスもね、飛べるんですよ。あんまり重いから、毎日飛ぶもんじゃないんですけどね」
「……どういうことですか?」思わず言葉が出た。妹の声で。

フロントガラスに映りこむ運転手の口元が笑ったようだ。
「どんな乗り物もね、基本的には飛べるように作られているんですよ。ただ、簡単に離陸できるつくりのものと、そうじゃないものとがありましてね。バスは重い上に翼が小さいでしょう?だから飛ぶのは得意じゃない。ある程度の加速も要るし、踏み台が無くちゃいけません」
今日はツイてる、と運転手は笑う。いつの間にか運転手はしっかりとこちらを向いて話していた。

ハンドルは?

覗き込むと独りでに舵を取っている。
「飛んでいる間は交通事故を気にしなくていいから楽ですよ。同じ時刻に二台以上空飛ぶ車は存在できないって決まりが有りますからね」
「決まり?」
「えぇ。だって一度に全部の車が飛び立ったら、大変なことになるでしょう?世の中ってのはうまく出来てるんですよ。ハンドルが勝手に動くのも、決まりです。飛んでいるバスを操作できるのはバス自身以外にありません。いつ飛ぶのかもバスの気分と決まりごと次第なんです」
バスの気分か。
なんだかよく解らなくなってきた。

もう一度車窓から外を見るとやはり他の車ははるか下に。
ロータリーで見かけた黒バイクがパトカーと追いかけっこをしていた。
バイクは物理的な法則を無視しつくして車の間を縫っているかと思えば建物の壁を垂直に駆け、空中へと飛び出した。



この空飛ぶバスに向かって。




【続く?】




99.9%濃縮還元虚構空想【虚言日記】




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2006/09/10/Sun 11:14:40  【虚言】九割九分九厘捏造記事【日記】/CM:0/TB:0/
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